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ETUDEBOOK

幸せの破片2013.11.25

【お題】Special Thanks!!
例え世界を敵にまわしても君を愛してる!
提供者:間柴RRRさんさん
夕日
提供者:ゅかちぃさんさん
バスケットボール(バスケ部、バスケも可)
提供者:セバスひなたさんさん

   真夜中。ただ一人、たった一人、ベンチに腰かける俺。タバコに火をつけようとするが、その手はまだ震えている。辺りにはガラスが砕けちったように、幸せのかたまりが破片のごとく散乱している。その惨劇を一目し、夜空を見上げた。
こんなはずじゃなかった…
   俺はあいつとデートをしていた。天気の良い日で、せっかくだから近くの公園にでも行こうと。あいつは陽気に弁当を作り出した。
   子ども連れの親子やお年寄りで賑わう公園。その片隅にひっそりと佇むバスケットリングがあった。俺らは導かれるようにそこへ行った。
   普段通りのデートだった。付き合って三年も経つ、そりゃそうだ。バスケをして、話して、飯食って、穏やかな時の流れだった。あの時までは。
   いつもあいつには適当なことを言って笑わせたり、驚かせたり、怒らせたりしていた俺。一通り話がつきた夕暮れ時、当然のように適当なことを口にした。別に怒らせるつもりはなかった。別れ話。といっても別れる気なんてさらさらないし、お互いが結婚を望んでいることも知っていた。
   しかし、予想以上の反応をあいつはした。それに俺は困惑した。冗談だって、と切り返した時にはもう遅かった。あいつは弁当を俺に投げつけた。そして、夕日の彼方へと消え去って行った。頬を伝うあいつの涙が目に焼きつく。こんなはずじゃなかった…
   人の性格なんてそう簡単には変わらない。俺は本音であいつとは話すことはなかった。いつも逃げてたんだと思う。それでも適当に言って笑い合い、ハッピーエンドのいつものくだりのはずが、今日は違った。俺は激しく動揺した。苛立ちが身体中にほとばしる。さっきまで楽しく遊んでいたバスケボールを蹴り飛ばす。しかし、何も収まらない。
   気持ちを落ち着かせるためにパチンコ屋に行った。日曜日の店内は俺の身体の逆鱗に触れる。俺は店を飛び出し、がむしゃらに走った。一頻り走ったところでふと思う。何がしたいんだ、俺は。俺はあいつに伝えたかった、本当の思いを。
   呼び出し音が耳の中をお経のように鳴り響く。同じリズムで同じトーン。
   あいつが出た。あいつの声は泣いていた。河原を歩いてるという。俺は携帯を切らずに走った、何を話すのでもなく、繋がっていたかった。
   俺は伝えたいあいつへの思いを口にした。その時だ。車の急ブレーキと共に風船が割れるような音が耳もとで木霊した。こんなはずじゃなかった…

   あいつは死んだ。

   夜空を見上げていた瞳から流れるいく筋もの涙が頬を伝い地面へと吸い込まれていく。まるであいつとの三年間の思い出が儚く消えてしまうかのように。その時、俺はあいつを失ったことを痛感し、あいつの存在のでかさを思い知った。
   こんなことになってしまうなら、何故もっと早く伝えることができなかったのか、そもそもあんな冗談をいわなければこうはならなかったのに。それに、もしも俺と一緒にいたらこんな事態にはならなかったかもしれないのに。

   例え世界を敵にまわしても君を愛してる。

   俺が伝えたかったこと。
   俺はガラスが砕けちったような、幸せの破片を一つずつ、噛みしめるように拾い胸にうずめた。